こざかな日記

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zoom RSS   試写会:『レッド・バロン』(2008/独)

<<   作成日時 : 2011/05/15 03:19   >>

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【公式サイト】http://www.redbaron.jp/

 ご無沙汰しております。m(_ _)m

 Aさんから映画の情報をいただいたのは、折しもバロン様の命日前日でありました。教えていただかなかったら完全スルーしちゃってた可能性高し。ありがとうございます♪ さらにまさかの試写会GET。これも常日頃の愛と布教活動の賜物ねと(笑)、いそいそと試写会場の月島に駆けつけたのでありますが、

 憤死するかと思ったマジで‥‥。

 観ながら何回「ありえない‥‥」とゆー言葉が口をついて出たことか。
 あんまりにもあんまりな出来映えにすっかり取り乱してしまい、日頃職場の飲み会でも1杯しかお付き合いしないのに「酒でも呑まなきゃやってられん!」と自らヤケ酒をあおり、生涯口にすまいと誓っていたもんじゃ焼きに初チャレンジしてしまったほどです。(※もんじゃには何の恨みもないのですが、猫飼ってる人間にあのルックスはちょっとキツイの‥‥。ちなみに味は思ってたほど悪くなかったです。)

 でも、もしかしたら時間経ってて自分の記憶が間違ってたりあいまいになってるのかもしれないし、と家にあるバロン様関連の文献や資料や作品を読みあさり、映画の記憶を払拭した上で自分の抱いた違和感や疑問に間違いがないかどうか、週末かけて裏付け調査に奔走してしまったほどです。だってホントに絶望的なまでにいいとこなしな映画だったんだもの‥‥。
 同行してくれた友人のMちゃんも「いままで観てきた独映画のなかでも、これはいちばんヒドイ出来かも‥‥」とため息をついていたので、あながちバロン様に思い入れがありすぎるゆえの乱心暴言ばかりではないと思し召せ。

 そう、何がツライってこれがれっきとした<ドイツ映画>だってことでね‥‥(落涙)。 
 歴史考証やリアリティの追求やドキュメンタリータッチの映画に関しては定評のあるドイツが、なんだってこんな時代考証無視しまくりで、臨場感のかけらもない作品をつくっちゃうかなあ。今までに見てきた独映画に秀作が多いだけに、ホントに呆然状態でした。
 なんでドイツ映画なのに台詞がぜんぶ英語なのかなあ‥‥。作品中なんでフランス語はOKでドイツ語はイカンねん。ときどきドイツ語訛りの英語が出るから、余計に違和感ありあり。ハリウッド公開狙ってたのかもしれませんが、むしろ英語に吹き替えさせたるで! ぐらいの意気込み見せてほしかったよ!

 ‥‥はあはあ。落ち着け落ち着くのよ自分。いままでどんな状況だって<よかった探し>を忘れなかったじゃないの。そうさな、1?2個ぐらいは思い当たらなくもないようなあるような。それに、一方的に非難を口にするのはフェアじゃないので、せめて理性的に問題点を指摘しないといかん。
 (※こんだけ口走っておいてまだ文句があるのか、と云われそうですが‥‥)


 ── というわけで、以下内容に触れます。口も悪いです。ご容赦ください。



 ?バロン様の人物像にもの申す。

 もーしょっぱなから女口説きはじめるわ、言動が浮ついてるわ、軍人としての礼節をぜんぜんわきまえてないわ、しまいにゃ基地に女連れ込むわ、こんなの俺たちの尊敬おく能わざる隊長閣下じゃないぜ! とゆー部下の皆さんの怨嗟の声がフランダースの空の下にこだましちゃうぜ‥‥(涙)。誰だよこの甘っちょろいタラシ男は?。こんなんならロジャー・コーマン監督の同名作品のほうのバロン様のほうがぜんぜん許せるよ?。

 戦争初期(1915)にはドイツの敗戦を予言し、末期(1917)には地上で戦ってる兵士がいちばん辛い、それでも彼らの士気向上に役立つなら自分も引っ込んでいられないとプロパガンダの立場を甘受するほどクリアな思考の持ち主ですよ。常にいちばん戦況の厳しい最前線にいたんですよ。ドイツと自分の立場を理解しすぎてたからこそ、あんなにお茶目でやんちゃでいたずら好きだった人が、負傷後すっかりふさぎ込んでブルー入っちゃってたんだっつーの。ケイトの安っぽい正義論で諭される謂われはないっつの。ええいバロン様をナメるな──(怒)!

 上層部からの一方的な押しつけに反抗的な部分もありましたが、仮にも皇帝陛下に直言してご不興を買うようなマネはしませんって。顔ばっか似てても、ご本人に漂う威厳とか気品とか近寄りがたさとかぜんぜん感じられないし。ちゃんと自伝とか読んで役柄に対する理解を深めてから出直してこい、と云いたいです。  


 ?テーマはラブなのか戦争なのか青春なのかはっきりせえ。

 確かに、映画のあらすじで<看護師のケイトと恋に落ち>ってゆーくだりを目にしたときから、イヤな予感はしてましたよ。歴史研究者のあいだで、バロン様の数少ない恋愛ネタ=ケイトはちょ?定番。入院してるときにたまたまツーショット写真撮っただけだろうに‥‥。10歳で幼年学校入学してそのまま士官学校→軍隊入り、休日は級友と博物館めぐりとか乗馬とか狩猟に興じてた御仁なので、友人の介添人やったとき、何故かバロン様が結婚したとゆー誤報が全国に流れてしまい、新聞にわざわざ訂正記事を載せるはめになったぐらい浮いた話に縁のない御方だったのです。

 多少の脚色やドリーマーな展開は、娯楽作品として当然だと分かっちゃいます。でも、唐突な出会いに強引な再会に不自然なラブの展開にだんだん苛立ちが募り、ただでさえ人数少ない貴重な看護師をバロン様付けにしたりとか変だし。亡くなる前日に基地に連れ込んだ(!)ときは唖然ボー然。あの、それ完全に軍紀違反だろ‥。
 日に何度も出撃し、あいまに仮眠をとってしのいでるような過酷な勤務状況ですよ。そんなヒマあったらむしろ迎撃1回増やすか、慣熟飛行してるって‥‥。(史実だとこの時期部下とウズラ狩りに行く予定でした)
 ケイトが物語に出張りすぎてる割には心理描写が緻密さに欠けるので、恋愛映画としては未消化な感じが否めません。かといって、戦争映画としては戦場の場面がえらく少ないので「ホントに戦時中なのかコレ?」と首をかしげてしまうし、飛行士たちの青春群像なのかと思えば個々の登場人物の人間関係さっぱり分からないし(涙)。全部手を付けようとして全部中途半端なまま終わっちゃった、みたいな‥‥。せめてどれか1点に絞ろうよテーマ。


 ?時代考証の不自然なあれこれ。

 少年時代のバロン様が狩りの最中、頭上を行く飛行機のすがたに大空へのあこがれを抱く‥‥とゆーOPは、ベタだけどまあ許容範囲。ホントは開戦するまで「ヒコーキなんて眉唾じゃね?」って思ってたそうですが。ロイ・ブラウン大尉がなんでこんなに出張ってんねんとか、ヴェルナー・フォスはベルケ中隊所属だし1917年に亡くなってるしバロン様より年下だし、とかロタールは極度のブラコンで尊敬するお兄ちゃんにこんな反抗的な態度とらないしお兄ちゃんより背高いし、とか‥‥うう許容範囲ではないけれど、まあ千歩譲ってもいいです。ホントは譲りたくないけど。うう。

 でも、戦後までバロン様の遺体の引き渡しがされなかったのに、なんで一般人のケイトが2週間後に墓参りしてんねんとか、物資の欠乏がピークに達してるはずの戦争末期でどうしてバロン様の実家の食卓にご馳走が並んでるんだろうとか、いろんなことが気になってぜんぜん映画に集中できなかった‥‥。ただでさえ人物像からしてイメージとかけ離れてるとゆーのに。
 
 しかも、まるっきり資料無視なのかと思いきや、『赤い戦闘機』や『荒鷲の母の日記』に登場する一節がぽんと顔を出すので、ちゃんと読んでてこれなのかよ、と余計に腹立たしさが増すッたらありません。バロン様がお母さんと亡くなった同僚たちの写真を見ながら話す、『荒鷲?』のなかでもいちばん胸を打たれる名場面をあんなふうにしちゃうなんて?(涙)。わ?んもうここに監督と脚本家と編集担当連れてきてよ?!! ひとこともの申さずにはいられませんよ!
 <歴史の真実がついに明かされる>とか冗談やめてって感じです。これが真実だと思われたら大迷惑、どころか名誉毀損だからマジで。よくリヒトホーフェン当家がOK出したなあ。
 たぶん、この映画で正しいのは軍服と飛行機のマーキングぐらいではないだろうか。
‥‥といっても、飛行機の塗装まで詳しくないので、その点はよく分かりませんが。


?ぜんぜん伝わってこない撃墜王たちの素顔。

 OPと、それにつづく空中戦の場面はけっこう見応えがありました。スピード感もあるし、眼下に広がる大地はちゃんとヨーロッパの景色だったし、迫力も出てたし。
 でも、2?3回目になるとカット割りの単調さが目立ち始めて(特に操縦席)、せっかく360°どんな角度でもカメラ回せるのに勿体ないなあ、とツッコミを入れながら観ている自分がそこに。有名なドッグファイトの場面はすべてカットされてて、映るのは墜落した連合軍機の残骸のみ。予算の関係なのか、戦闘機が出撃する場面や帰投する場面もほとんどありません。挙げ句の果てには、最大の見せ場だと思われる1918年4月21日の交戦場面がまったくないときたもんだ。‥‥あの─、ファンがいちばん映像で観たかった場面をいっさい端折って、いったい何のためにこの映画作ったんですか‥‥?

 不思議でならなかったのが、登場する戦闘機パイロットたちです。
 第11戦闘機中隊、第一戦闘航空団といえば、ドイツの有名な撃墜王のオンパレードですよ。バロン様やフォス、ヴォルフ、ロタール以外にも有名人が目白押しですよ。それぞれ個性的な面々で愉快なエピソードもたくさんあるのに、なぜ出てこない‥‥。シェーファーやアルメンローダー、フェストナーにレーヴェンハルトはどうしちゃったですか。わざわざ架空のユダヤ系パイロットを登場させる意味ってナニ。そんなのフォスでええやん。なぜ従兄弟のヴォルフラムに焦点が。末弟のボルコだと年齢差がありすぎるからか。そら後の空軍のお偉いさんですが、ウーデットやゲーリングは完全スルーだったじゃんよ‥‥。
 ‥‥あ、でもバロン様の副官のボーデンシャッツを登場させた点だけは評価します。あとお姉さんのイルゼが顔を出すのも珍しいかな。

 ご飯食べたり町でハメ外してる場面ばっかりで、肝心のブリーフィングや出撃準備してる姿がぜんぜんありません。何故だ。だから、お互いの人間関係がぜんぜん見えてこない。ある程度の予備知識があっても頭の中は疑問符でいっぱいだったから、これじゃあ登場人物に感情移入せいといわれても無理です。
 バロン様がベルケにスカウトされたくだりとか、下士官に間違われてしっぺ返したり、撃墜した連合国側のパイロットと歓談する場面とかレッド・バロンが形成されていく上で外せないでしょそこは、的なエピソードがカットされまくりだとゆーのに! ホントに何の目的でこの映画作ったのか、真剣に理解に苦しむんですけど‥‥。


 ── こんだけ書いてもまだ云い足りないような気がする。ある意味すごいなこの映画。

 結論として、脚本もテーマも編集も内容も残念な作品、としか云いようがないです。すみません私ウソつけません。
レッド・バロンに少しでも興味や思い入れがあるかたは、心身の安寧のためにも観ないことをお勧めします。ミリタリマニアでも、戦闘シーンたぶん食い足りないです。
そうでないかたも、これが<歴史の真実>だとゆー世迷いごとを仮にも信じたりなさいませんよう。本物のバロン様はこんなんじゃないのよー。もっとカッコイイしお茶目だし可愛いのよ?。

 せめてバロン様の自著『赤い戦闘機』が流通してたら「コレ読んで誤解を解いて?」と言えるのになあ‥‥。興味があるかたはぜひ国会図書館に足を運んでいただきたいです。英語版なら、たしかネットに全文UPされてたハズ。



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